税理士が訴えられる「消費税」のトラブル

1 消費税では届出書の提出失念や課税選択のトラブルが多い

消費税法には、免税事業者が課税事業者を選択する制度(消費税法9条4項)や中小の課税事業者の簡易課税制度(消費税法37条1項)のように、納税者が消費税の課税形態を選択適用できる仕組みがあります。

課税制度の選択や不適用についての届出書は、原則として、課税期間が開始する前までに提出することが必要です。
また、いったん課税事業者や簡易課税制度の選択をすると、原則として、2年間はそれをやめることができません(消費税法9条6項、37条6項)。
そのため、消費税の課税形態の選択については、将来の事業の見通しを踏まえて慎重に判断することが必要になります。

消費税の課税形態によって納税者の税額には影響が生じますので、消費税の実務においては、各種届出書の提出失念や課税形態の選択に関するトラブルが多くなっています。

2 税理士の損害賠償責任が問題となる場合とは?

税理士の損害賠償責任が問題となる事案においても、消費税に関する各種届出書の提出失念や課税形態の選択を原因とするものが多数を占めます。

届出書の提出を失念する

例えば、簡易課税制度を選択適用していた依頼者について、多額の設備投資により消費税の還付が見込まれる課税期間の開始前に「簡易課税制度選択不適用届出書」が提出されていなかったため、消費税の還付が受けられなくなるケースがあります。

この場合には、税理士が依頼者の「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出の必要性を認識していながらその提出を単純に失念したのか、あるいは税理士が依頼者から適切な情報提供を受けておらず消費税の還付が見込まれる事情を認識していなかったのか、などが問題となります。

課税形態の選択を誤る

依頼者が簡易課税制度を選択適用したところ、実際には本則課税の方が有利だったようなケースでは、税理士が依頼者の課税形態の選択に必要な事実関係の調査を十分に行ったか、税理士が依頼者に課税形態の選択に関する適切な助言や指導を行ったか、などが問題となってきます。

3 税理士の責任はどのように判断されるか?

税理士が依頼者の消費税の課税形態に関する届出書の提出の必要性を認識していながら、その提出を単純に失念して依頼者に損害が発生した場合には、税理士は善管注意義務違反により損害賠償責任を負うことになります。

それでは、そもそも税理士が依頼者の課税形態に関する届出書を提出する必要が生じるのは、どのような場合でしょうか?
税務申告に関与する税理士は、依頼者の消費税の課税形態の選択について、どのような義務を負うのでしょうか?

ここでは、消費税の課税形態の選択に関する税理士の義務が問題となった判例(東京地裁平成26年3月26日判決)を基にして、税理士の責任についての判断過程をみていきます。

消費税の課税形態に関する判断は事業者に委ねられている

まず、消費税の課税形態に関する判断は、事業者の翌期以後の事業の見通しに従って行われるものであることなどから、その判断は事業者に委ねられており、税務申告等に関与する税理士が決定し得るところではない、とされます。

裁判所は、消費税の課税形態に関する判断について、事業者の経営判断の範疇に入るものと捉えていることになります。

税理士には、原則として、依頼者の消費税の課税形態についての助言や指導を行う義務はない

前述のように、消費税の課税形態に関する判断は事業者に委ねられていることから、税務申告等に関与する税理士については、依頼者である事業者から個別の相談や問い合わせがない限り、原則として、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し又は予見したうえで、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務はない、とされます。

裁判所は、税務申告に関与する税理士について、原則として、依頼者の消費税の課税形態についての助言や指導を行う義務はないとしたうえで、例外的に依頼者から個別の相談や問い合わせがある場合に限り、依頼者に対する助言や指導を行う義務が生じると判断していることになります。

税理士が依頼者の課税上の重大な利害得失を認識したような場合には、依頼者に助言や指導をする付随的な義務が生じる

前述した例外的に税理士の依頼者に対する義務が生じる場合に関して、裁判所は、消費税の申告業務等を受任している税理士について、
①依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談や問い合わせがある場合
②個別の相談や問い合わせがなくても、依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失がありうることを具体的に認識し、もしくは容易に認識しうるような事情がある場合には、
依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もありうる、としています。

裁判所は、税理士が、依頼者からの個別の相談や適切な情報提供により、消費税の課税形態に関する重大な利害得失を認識したような場合には、依頼者に対し、消費税の課税形態の選択や届出書の提出について助言や指導等を行う義務が生じる、と判断していることになります。

したがって、税理士が、依頼者からの相談や情報提供により消費税の課税形態の選択に関する助言や指導等を行う義務を負うにもかかわらず、その義務を怠ったことにより依頼者に損害が発生した場合には、税理士は損害賠償責任を負うことになります。

実務上、消費税の申告業務等を受任している税理士が、依頼者から相談を受けたり、依頼者の事業に関する情報に接したりして、消費税の課税形態の選択に関する助言や指導等を行うことがほとんどですので、その助言や指導の事実を書面に残しておくことが重要といえます。 

4 まとめ 

消費税のトラブルを未然に防ぐためには、税理士としては、まずは依頼者の各種届出書の提出状況を把握することが必要です。
また、依頼者に対し、消費税の課税制度の内容や特徴を説明して、依頼者から消費税の処理に必要な情報を事前に提供してもらうことが重要となります。

税理士と依頼者の間では情報提供の責任について問題となりやすいことから、消費税の課税形態の選択に影響を与えるような事実の報告に関しては、その情報提供の責任分担について契約書に記載しておくことが重要です。


関連記事はこちら:税理士の責任はどこまで及ぶか?

関連業務はこちら:税理士賠償責任に関する対応

 

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