重加算税が課される場合とは?重加算税の争点と判例の考え方

1 重加算税は事実の隠蔽または仮装がある場合に課される

申告すべき税額が過少に申告されていた場合や無申告となっていた場合、源泉徴収による税金が納付されなかった場合などには、それぞれの納税義務違反に応じて、原則として、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税が賦課されます。

そして、重加算税は、上記の各加算税が賦課される場合において、税金の計算の基礎となるべき事実の隠蔽または仮装という不正手段が用いられていた場合に、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税の代わりに、より重い行政上の制裁として賦課されることになります。

重加算税は、他の加算税と同様に、税務当局の賦課決定処分により税額が確定し、納税者が重加算税の賦課決定処分に不服がある場合には、不服申立(再調査の請求、審査請求)や訴訟により争われることになります。

ここでは、実務上、税務当局と納税者の間で争いとなることの多い重加算税に関して、その賦課要件をめぐる争点や判例の考え方などについてみていきます。

2 重加算税の概要

(1)重加算税の趣旨

判例は、重加算税について、課税要件事実を隠ぺいし、または仮装する方法による納税義務違反の発生を防止し、もって徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり、違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科せられる刑罰とは趣旨、性質を異にするとしています(最高裁昭和45年9月11日判決)。

この判例は、直接的には、税金を逋脱する同一の行為に重加算税のほかに刑罰を科しても憲法39条の二重処罰の禁止には違反しない旨を判示したものですが、重加算税の賦課要件の解釈をめぐる争点については、判例で示された重加算税の趣旨や性質を踏まえて検討することが重要となります。

(2)重加算税の賦課要件

重加算税が過少申告加算税や無申告加算税の代わりに課される場合

重加算税は、納税者が税金の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽または仮装したことに基づいて過少申告や無申告の結果が発生した場合に、過少申告加算税や無申告加算税に代えて課されます(国税通則法68条1項、2項)。

重加算税の額は、過少申告加算税に代えて課される場合、その基礎となるべき税額の35%となります(同法68条1項)。無申告加算税に代えて課される場合には、その基礎となるべき税額の40%となります(同法68条2項)。

なお、隠蔽または仮装されていない事実に基づくことが明らかな部分の税額は、重加算税の対象から除外されます(同法68条1項括弧内、2項括弧内)。

重加算税が不納付加算税の代わりに徴収される場合

重加算税は、納税者が事実の全部又は一部を隠蔽または仮装したことに基づいて源泉徴収による税金を納付しなかった場合に、不納付加算税に代えて徴収されます(国税通則法68条3項)。

重加算税の額は、不納付加算税に代えて徴収される場合には、その基礎となるべき税額の35%となります(同法68条3項)。

なお、隠蔽または仮装されていない事実に基づくことが明らかな部分の税額は、重加算税の対象から除外されます(同法68条3項括弧内)。

(3)短期的に繰り返される隠蔽や仮装を抑制するための重加算税の加重措置

国税通則法においては、平成28年改正により、隠蔽または仮装が短期間に繰り返して行われた場合の重加算税の加重措置が導入されています。

具体的には、事実の隠蔽または仮装に基づく期限後申告等があったことにより重加算税が賦課される場合において、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を賦課されたことがある場合、重加算税の額は、前述の割合(35%(過少申告、不納付)、40%(無申告))に、それぞれ10%加算(35%→45%、40%→50%)されることになります(国税通則法68条4項)。

(4)電子帳簿保存法による重加算税の加重措置

令和3年度税制改正による「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(以下「電子帳簿保存法」といいます)の一部改正(令和3年3月改正。令和4年1月1日施行)では、電子データの改ざん等による不正に対し重加算税を加重する措置が新設されています。

具体的には、一定の国税関係書類に係る電磁的記録又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関し期限後申告等があった場合において、国税通則法68条の重加算税の規定に該当するときは、重加算税の額は、前述の割合(35%(過少申告、不納付)、40%(無申告))に、それぞれ10%加算(35%→45%、40%→50%)されることになります(改正電子帳簿保存法8条5項)。
当該規定は令和4年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます(所得税法等の一部を改正する法律(令和3年法律第11号)附則82条8項)。

これは、電子帳簿等保存制度の見直しにより、電子帳簿等の保存の手続や要件が廃止・緩和される一方で、電子データの改ざん等による事実の隠蔽または仮装について重加算税の加重措置が設けられたものです。 

3 重加算税の賦課要件をめぐる争点

(1)事実の「隠蔽」「仮装」とは?

重加算税は、納税者が事実の全部又は一部を「隠蔽」または「仮装」した場合に賦課されます(国税通則法68条)。

ここにいう事実の「隠蔽」とは、売上を除外したり証拠書類を廃棄したりするなど、税金の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠すことをいうと一般的に解されています。

また、事実の「仮装」とは、架空取引の計上や架空の書類の作成、他人の名義の利用など、実際には存在しない事実が存在するように見せかけることをいうと解されています。

正確な会計帳簿を作成していながら意図的に所得金額のごく一部のみを申告する場合、重加算税の賦課要件を満たすか?

納税者が、売上の除外や架空仕入の計上などの不正手段を用いることなく、正確な会計帳簿を作成していながら、意図的に所得金額のごく一部のみを抽出して申告する場合、重加算税の賦課要件を満たすでしょうか?

この点に関して、判例は、納税者が正確な所得金額を把握しうる会計帳簿を作成していながら、所得金額のごく一部のみを作為的に記載した納税申告書を提出した場合について、会計帳簿に不実の記載がないとしても、所得の「隠ぺい」にあたる旨を示しています(最高裁平成6年11月22日判決)。

具体的には、納税者が、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じて事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことを予定しながら、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した場合には、所得の存在を一部隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合にあたるとしています。

この判例は、殊更の過少申告の場合について、納税者が予め会計帳簿に不正な操作を加えていなくても、所得金額を秘匿しようとする納税者の意図が客観的に認められる場合には「隠ぺい」にあたることを認めたものと考えられます。

架空名義の利用等の積極的な行為がない場合でも、納税者の過少申告の意図を外部からも窺い得る特段の行動がある場合には、重加算税の賦課要件が満たされる

また、判例は、納税者が多額の所得があることを顧問税理士に秘匿して過少な申告を記載した申告書を作成させて提出した場合について、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しないとしても、重加算税の賦課要件が満たされるとしています(最高裁平成7年4月28日判決)。

この判例は、重加算税の賦課要件についての一般論を示しており、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するとしています。
そして、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」について、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でないとしたうえで、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされる旨の一般論を示しています。

実務では、二重帳簿の作成や資料の隠匿、架空名義の利用等の積極的な行為が存在しない場合において、納税者の当初からの過少申告の意図やその意図を外部からも窺い得る特段の行動の有無について、税務当局と納税者の間で争われるケースが多くあります。

納税者としては、税務当局に対し、過去の判例や裁決のポイントを踏まえて、自己の主張を証拠に基づいて合理的に説明することが重要となります。

(2)納税者が過少申告等について認識していることが必要か?

重加算税の主観的な賦課要件として、納税者は、①事実の隠蔽または仮装と②それに基づく過少申告等について、どのような認識を有していることが必要となるでしょうか?

この点について、判例は、重加算税を賦課するためには、納税者が故意に事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足りるとしており、それ以上に、申告に際し、納税者が過少申告を行うことの認識を有していることは必要でないとしています(最高裁昭和62年5月8日判決)。

したがって、重加算税の賦課要件としては、納税者が、税金の計算の基礎となる事実を隠蔽または仮装することについて認識していることが必要となりますが、過少申告等についての認識は不要ということになります。

(3)納税者以外の第三者による隠蔽・仮装があった場合に納税者本人に重加算税を賦課することができるか?

国税通則法68条において、事実の「隠蔽」または「仮装」を行う主体は「納税者」と定められており、ここにいう「納税者」とは、国税に関する法律の規定により国税を収める義務がある者及び源泉徴収等による国税を徴収して国に納付しなければならない者をいいます(国税通則法2条5号)。

したがって、重加算税の賦課要件としての隠蔽・仮装行為は、本来的には、納税者本人(法人の場合は、その法人を代表すべき代表取締役等)の隠蔽・仮装行為をいうと考えられますので、納税者以外の第三者による隠蔽・仮装行為があったとしても、納税者本人に重加算税を賦課することはできないとも思われます。 

第三者の隠蔽・仮装行為が納税者本人の行為と「同視」できるときは納税者本人に重加算税を賦課できる  

しかし、判例は、納税者以外の者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、重加算税制度の趣旨及び目的に鑑みて、納税者本人に重加算税を賦課することができる旨を示しています(最高裁平成18年4月20日判決、最高裁平成18年4月25日判決)。

このように、判例は、納税者以外の第三者の隠蔽・仮装行為が納税者本人の行為と「同視」できることを要件として、第三者による隠蔽・仮装行為があった場合にも納税者本人に重加算税を賦課することができるとしています。

そして、第三者の隠蔽・仮装行為が納税者本人の行為と同視できるか否かについては、第三者の属性や立場、納税者本人との関係、第三者の隠蔽・仮装行為に対する納税者本人の認識の有無、是正の可能性などを考慮して判断されることになります。

法人の役員や従業員が隠蔽・仮装行為を行った場合

納税者である法人の役員(代表者以外)や従業員が隠蔽・仮装行為を行った場合については、役員や従業員の隠蔽・仮装行為を納税者本人の行為と同視できるか否かについて、役員や従業員の地位や権限、納税者本人との関係、役員や従業員の隠蔽・仮装行為に対する納税者本人の認識や監督状況などを考慮して個別具体的に判断されることになります。

裁判例には、代表権を有しない常務取締役が主導して仮装行為をした場合について、法人の事業活動において代表者に準ずるような包括的な権限を有する者が、その権限内において行った行為については、法人の代表者自身の認識ないし認識可能性の有無にかかわらず、法人自身の行為と評価される旨を判示したものがあります(広島高裁平成26年1月29日)。

税理士が隠蔽・仮装行為を行った場合

判例は、納税者から納税申告手続を委任された税理士が隠蔽・仮装行為をして過少申告をした場合について、税理士の隠蔽・仮装行為を納税者本人の行為と同視できる場合の判断基準を示しています(最高裁平成18年4月20日判決、最高裁平成18年4月25日判決)。

具体的には、納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができ、法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず、納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われ、それに基づいて過少申告がされたときには、当該隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視することができ、重加算税を賦課することができるとしています。
他方、当該税理士の選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけで、当然に当該税理士による隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視することはできないとしています。

上記の判断基準は、あくまでも税理士が納税者から個別的な委任を受けた場合のものであり、第三者の地位や立場、委任の態様等によって判断の基準は異なり得ると考えられます。

4 まとめ

国税庁は、毎年、税目ごとの税務調査の状況を発表しています。
令和2年11月に発表された「令和元事務年度 法人税等の調査事績の概要」では、消費税還付申告法人に対する取組として、架空の輸出売上(免税売上)と架空の国内仕入(課税取引)の計上などによる消費税の不正還付に対して厳正な調査を実施していることが示されています。また、無申告法人に対する取組としては、多額の不動産売却収入について契約書等を破棄して売却代金を現金で受領することで取引を隠蔽していた場合などが主な調査事例として挙げられています。
近年、重加算税については、隠蔽・仮装を短期間に繰り返すことを防止するためや電子データ等の改ざん等による隠蔽・仮装を防止するための加重措置が相次いで設けられており、今後の重加算税の制度の動きにも留意する必要があります。

 

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