脱税とは?脱税したらどうなる?脱税事件の類型と刑事告発の状況

1 脱税とは何か?

脱税とは、法律的にどのような行為を指すのでしょうか?
刑事告発される脱税事件とそれ以外の脱税の違いは何でしょうか?

脱税とは、一般的に、不正な行為によって税を免れる行為とされています。
しかし、一口に脱税事件といっても、税金に関連する刑事事件については、不正行為の内容や対象となる税金によって様々な類型があります。
また、脱税には、通常の税務調査の結果により重加算税などの課税処分を受けて終了するものから、査察調査の対象となり刑事告発されたうえで、最終的に刑事裁判により刑事罰が科されるものまで様々な事案があります。
ここでは、近年の脱税事件の類型や種類、刑事告発される脱税事件とそれ以外の脱税の違いなどについてみていきます。

2 脱税事件にはどのような類型があるか?

(1)逋脱(ほだつ)犯・・・脱税事件のほとんどがこのケース

一般的に「脱税事件」という場合には、この逋脱犯(狭義の脱税犯)の刑事事件を指すことが多いといえます。
逋脱(ほだつ)犯とは、税を免れる罪という意味です。税法関係で使われる用語ですが、ここでは、単に「脱税犯」として説明していきます。

脱税犯は、「偽りその他不正の行為」により、税を免れること、または税の還付を受けることにより成立します。
所得税や法人税、消費税などの各種の税法に規定されています(所得税法238条1項、法人税法159条1項、消費税法64条1項など)。

脱税犯の手段である「偽りその他不正の行為」の意味について、判例は、「逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行なうことをいう」としています(最高裁昭和42年11月8日大法廷判決)。

具体的には、税を免れる意図をもって、収入を除外したり架空の経費を計上したりする帳簿書類への虚偽記載や、二重帳簿の作成により正規の帳簿を秘匿するなどの所得秘匿工作が行われる場合には、「偽りその他不正の行為」に該当します。

そして、この「偽りその他不正の行為」の結果として、税を免れたり、税の還付を受けたりした場合に、脱税犯が成立することになります。

不申告の場合はどうなる?

前述のように、脱税犯が成立するためには、単に税を免れただけではなく、「偽りその他不正の行為」という所得秘匿工作の存在が必要になります。
そのため、「偽りその他不正の行為」を伴わない単純な不申告の場合には、脱税犯(逋脱犯)は成立しません(この場合は、単純無申告犯などの別の犯罪の成否が問題となります)。

もっとも、不申告の場合であっても、所得秘匿工作をしたうえ、逋脱の意思で申告書を提出しなかった場合(虚偽不申告)には、所得秘匿工作を伴う不申告の行為自体が「偽りその他不正の行為」に該当するものとされますので、脱税犯が成立することになります(最高裁昭和63年9月2日決定)。

過少申告については、形式的には過少申告における不申告部分が存在しますが、判例は、真実の所得を隠蔽し、それが課税対象となることを回避するため、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の申告書を提出した場合(虚偽過少申告)には、過少申告自体が「偽りその他不正の行為」に該当するとしており、脱税犯が成立します(最高裁昭和48年3月20日判決)。

消費税の不正受還付犯は「未遂」も処罰される

脱税犯が成立するためには、「偽りその他不正の行為」によって、税を免れたことや税の還付を受けたという結果の発生が必要になります。
したがって、「偽りその他不正の行為」は存在するものの、結局、税を免れたり、税の還付を受けたりすることはなかったという未遂の場合には、脱税犯(逋脱犯)は成立しません(この場合、刑法の詐欺罪の未遂罪の成否が問題となります)。

しかし、脱税犯のうち、消費税の輸出免税制度などを利用した消費税の不正受還付犯については、平成23年に未遂処罰の規定が創設されています。
したがって、消費税について自己名義で不正な還付申告を行った場合には、還付金を受け取っていない場合でも、消費税の不正受還付犯の未遂として処罰されます(消費税法64条1項2号、2項)。

脱税犯の刑事罰は重い。重加算税や延滞税もかかる。

刑事罰について、直接税(所得税や法人税など)及び消費税の場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科とされます。
罰金については、脱税額が1000万円を超えるときは、情状により脱税額まで科されることがあります(所得税法238条1項、2項、法人税法159条1項、2項、消費税法64条1項、3項など)。

そして、脱税犯の場合には、通常、本税(本来納めるべき税金)を納付するほかに、重加算税(過少申告の場合35%、無申告の場合40%)と延滞税(原則14.6%。なお、平成25年改正により、特例基準割合+7.3%)が課せられます(国税通則法68条、60条)。そのほか、地方税の重加算金や延滞金もかかりますので、負担は相当重いといえます。

(2)単純無申告逋脱犯・・・平成23年に創設された脱税犯の類型

これは平成23年に創設された脱税犯の新しい類型です。「故意の申告書不提出による逋脱犯」ともいいます。
故意に申告書を法定申告期限までに提出しないことにより、税を免れた場合に成立します(所得税法238条3項、法人税法159条3項、消費税法64条5項など)。

近年の無申告の脱税事案に対処するもの

従来、「偽りその他不正の行為」を伴わない単なる不申告の場合については、単純無申告犯(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)として処罰されてきました。
しかし、近年の外国為替証拠金取引(FX取引)により多額の利益を得た者が申告を一切せずに税を免れるような事案に厳正に対処するため、単純無申告犯とは区別される新しい脱税犯の類型として、単純無申告逋脱犯が創設されました。

刑事罰については、直接税(所得税や法人税など)及び消費税の場合、5年以下の懲役もしくは500万円(情状により脱税額)以下の罰金またはその併科とされます(所得税法238条3項、4項、法人税法159条3項、4項、消費税法64条5項、6項など)。
課税処分としては、無申告加算税(15%、50万円超の部分は20%)が課せられます(国税通則法66条)。

(3)不納付犯・・・会社が源泉徴収した所得税を納付しない場合が典型例

徴収納付義務者が、徴収して納付すべき税金を納付しない場合に成立します。
具体的には、特別徴収した国際観光旅客税を納付しない場合(国際観光旅客税法24条1項)、特別徴収した地方税を納付しない場合(地方税法328条の16第1項)などがあります。

源泉所得税の場合でみると、徴収納付義務者(会社など)が源泉徴収した所得税を法定納期限までに納付しない場合に成立します。
刑事罰は、10年以下の懲役もしくは200万円(情状により脱税額)以下の罰金またはその併科となります(所得税法240条1項、2項)。
課税処分として、不納付加算税(10%)あるいは重加算税(35%)が課せられます(国税通則法67条、68条)。

(4)単純無申告犯・・・単純な申告義務違反としての処罰

正当な理由がないのに申告書をその提出期限までに提出しない場合に成立します(所得税法241条、法人税法160条、消費税法66条など)。
この単純無申告犯は、申告納税制度を維持する見地から規制される租税秩序犯ですので、単純な申告義務違反としての処罰となります。
前述の脱税犯(逋脱犯)や不納付犯の規定(税を直接免脱する行為を処罰)とは制度趣旨が異なります。

不申告のうち、所得秘匿工作がなく、故意に税を免れるものでない場合に成立

前述のように、不申告のうち、所得秘匿工作を伴う不申告(虚偽不申告)については脱税犯として処罰されます。
また、所得秘匿工作がなくても、故意に税を免れるための不申告とされる場合には単純無申告逋脱犯として処罰されます。
したがって、単純無申告犯は、上記以外の単純な不申告の場合に成立し処罰されるものとなります。

刑事罰については1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
課税処分としては、無申告加算税(15%、50万円超の部分は20%)が課せられます(国税通則法66条)。

3 脱税が刑事事件になる場合とならない場合の違いは? 

(1)脱税犯の対象となる行為と重加算税の対象となる行為は重なり合うことが多い

前述のように、脱税犯(逋脱犯)は、「偽りその他不正の行為(所得秘匿工作)」がある場合に成立します。

他方、重加算税は、税金の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部について「隠蔽」または「仮装」がある場合に課せられます(国税通則法68条)。

ここでいう事実の「隠蔽」とは、収入の除外や証拠書類を廃棄するなど、税金の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠すことをいいます。
また、事実の「仮装」とは、架空取引の計上や架空の書類の作成、他人の名義の利用など、実際には存在しない事実が存在するように見せかけることをいいます。

そうすると、脱税犯の対象とされる行為(偽りその他不正の行為)と重加算税の対象とされる行為(事実の隠蔽または仮装)は実質的に重なり合うことが多いといえます。

(2)刑事事件になる脱税とならない脱税の区別は?

それでは、脱税について、査察調査を受けて刑事告発される場合(刑事罰+重加算税)とそれ以外の課税処分に留まる場合(重加算税のみ)は、実務上どのように区別されているのでしょうか?

脱税の事案において、刑事告発を視野に入れて査察調査の対象とされる事案と、通常の税務調査により重加算税の課税処分を受けて終了する事案との違いは、脱税行為の内容や脱税額の大きさなどが基準になっています。

従来、刑事告発された脱税犯の事件が起訴されるか否かの基準(金額)については、1億円程度(脱税額)といわれていましたが、近年はそれを下回る金額でも起訴される事案が増えています。

もっとも、消費税の不正受還付犯の事案については、以前より、上記の基準とは別個に、国庫金の詐取ともいえる違法性の高い事案であることが重視されて、相対的に少ない金額(還付額)でも起訴されています。
これは、消費税の不正受還付犯に対する税務当局の厳正な姿勢が表れているものといえます。

4 まとめ

2019年6月に国税庁は「平成30年度 査察の概要」を公表しました。
そこでは、査察における重点事案として、①消費税の不正受還付事案、②無申告による逋脱事案、③国際事案、④市場が拡大する分野における事案などの社会的波及効果の高いと見込まれる事案について積極的に取り組むことが示されています。
消費税率の引き上げに伴い、様々な「脱税」に関心が集まっている昨今の情勢を踏まえると、今後の税制や査察の動向についても留意していく必要がありそうです。

関連業務はこちら:刑事事件(税金関連) 

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