過少申告加算税における「更正の予知」と「正当な理由」
1 過少申告加算税が減免される「更正の予知」と「正当な理由」
過少申告加算税は、期限内に提出された申告書による税額が過少であるとして修正申告書が提出された場合や更正があった場合に課されます。
過少申告加算税の納税義務は、その対象となる国税の法定申告期限の経過の時に成立し(国税通則法15条2項14号)、その金額は税務当局の賦課決定処分により確定します(同法32条)。
もっとも、過少申告加算税は、当初の申告による税額が結果的に過少となった場合に一律に課されるものではなく、「更正を予知」しないで修正申告書の提出が行われた場合には減免されることになります。
また、修正申告が更正を予知して行われた場合や更正があった場合でも、過少申告となったことについて「正当な理由」がある場合には過少申告加算税は課されません。
以下では、過少申告加算税が減免される「更正の予知」と「正当な理由」の具体的な意義や判例の考え方などについてみていきます。
2 過少申告加算税の概要
(1)過少申告加算税の金額
過少申告加算税は、原則として修正申告や更正に基づき納付すべき税額(増差税額)の10%に相当する金額となります(国税通則法65条1項)。
ただし、増差税額のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分の金額については5%に相当する金額が加算された金額となります(国税通則法65条2項)。
これは、増差税額が多額となる場合について、通常の過少申告加算税よりも負担を加重することにより、その抑制を図るものです。
また、帳簿の不提示や不記載等の一定の場合には、増差税額の10%または5%に相当する金額が加算された金額となります(国税通則法65条4項)。
これは、記帳義務の適正な履行を担保し、帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止するために、過少申告加算税等の加重措置が講じられたものです。
(2)過少申告加算税の趣旨
判例(最高裁平成18年4月20日判決)は、過少申告加算税について、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であるとしています。
また、過少申告加算税と重加算税は、いずれも過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものですが、同判例は、過少申告加算税について、主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないとしています。
3 過少申告加算税は「更正を予知」しないで修正申告書の提出が行われた場合に減免される
(1)過少申告加算税の減免要件としての「更正の予知」
国税通則法は、過少申告がされた場合であっても、その後の修正申告書の提出が、国税についての調査があったことにより当該国税の更正を予知して行われたものでない場合には、過少申告加算税を減免する旨を定めています。
具体的には、修正申告書の提出が、その申告に係る調査の事前通知の前に行われ、かつ、調査による更正を予知してされたものでない場合には、過少申告加算税は課されません(国税通則法65条6項)。
また、修正申告書の提出が、その申告に係る調査の事前通知の後に行われたとしても、調査による更正を予知してされたものでない場合には、過少申告加算税は、増差税額の5%に相当する金額に軽減されます(国税通則法65条1項括弧書)。
裁判例(東京地裁平成24年9月25日判決)は、平成28年度改正前の国税通則法65条5項が、更正を予知しないで修正申告書の提出が行われた場合に過少申告加算税を免除する旨を定めていた趣旨について、納税者の自発的な修正申告を歓迎し、これを奨励することを目的とするものと解しています。
(2)修正申告書の提出が「更正を予知してされたものでない」場合とは?
過少申告加算税の減免要件である、修正申告書の提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」の意味について、裁判例(東京地裁平成24年9月25日判決)は、①国税についての調査の着手があり、②申告の不適正またはその端緒となる資料が発見されることにより、更正に至ることが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階(客観的確実時期)に達した後に、③納税者が更正に至ることを認識したうえで修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいう、としています。
これは、納税者の自発的な修正申告書の提出であるかどうかを判断するにあたり、過少申告加算税の減免要件を(ア)調査があったことと(イ)更正を予知した修正申告書の提出でないことの二つに分けたうえで(二段階要件説)、(イ)の「更正の予知」の時期の認定について、不適正な申告の端緒となる資料の発見により客観的な確実性を求めるものと考えられます。
上記の裁判例によると、修正申告書の提出が「更正を予知してされたものでない」と主張するためには、国税についての調査が進行して、更正に至ることが客観的に相当程度の確実性をもって認められる前に、修正申告を決意して修正申告書を提出することが必要であるといえます。
4 過少申告加算税は過少申告となったことに「正当な理由」がある場合には免除される
国税通則法は、過少申告加算税の賦課要件を満たす場合であっても、修正申告又は更正に基づき納付すべき税額(増差税額)の計算の基礎となった事実のうちに、当初の税額の計算の基礎とされていなかったことに正当な理由があると認められるものがある場合には、その事実に対応する部分について過少申告加算税を課さない旨を定めています(国税通則法65条5項1号)。
過少申告加算税の免除要件としての「正当な理由」は、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に認められる
過少申告加算税が免除される「正当な理由」がある場合の意義について、判例(最高裁平成18年4月20日判決)は、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいう、と判示しています。
過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反がある場合には原則として課されることから、判例は、その免除要件としての「正当な理由」について、納税者の責めに帰することのできない客観的事情があるか、納税者にどの程度の非難可能性があるか、という観点から厳格に判断していると考えられます。
(1)税理士の不正行為への税務署職員の加担の有無と「正当な理由」
ア 確定申告書を受理した税務署職員が税理士の脱税行為に加担していない場合
判例は、税理士が納税者に無断で虚偽の記載をした確定申告書を提出して過少申告をした事案において、納税者が税務署職員等から示された税額よりも相当低い税額で済むとの当該税理士の言葉を信じてそれ以上の調査確認をせず、確定申告書の内容を確認しなかったなど、納税者本人に落ち度がある一方で、確定申告書を受理した税務署職員が当該税理士による脱税行為に加担した事実が認められない等の事情の下では、過少申告加算税を免除する「正当な理由」は認められないとしています(最高裁平成18年4月20日判決)。
この判例は、税理士に納税申告手続を委任した納税者本人について、過少申告の点に関して一定の落ち度があり、他方で税務署職員が税理士の脱税行為に加担していない場合においては、過少申告加算税の賦課が不当又は酷になる事情があるとは認められないという判断をしています。
イ 確定申告書を受理した税務署職員が賄賂を収受して税理士の不正行為に共謀加担した場合
一方、判例は、税理士が納税者に無断で虚偽の記載をした確定申告書を提出して過少申告をしたという上記アと同様の事案において、当該税理士に納税申告を委任した納税者本人に一定の落ち度があるものの、確定申告書を受理した税務署職員が、収賄の上で当該税理士の不正行為に共謀加担し、それが無ければ当該税理士の不正行為は不可能であったともいえる等の事情の下では、過少申告加算税を免除する「正当な理由」が認められるとしています(最高裁平成18年4月25日判決)。
この判例は、上記アと同様の事案において、過少申告加算税を免除する「正当な理由」を認めて上記アと結論を異にしており、その理由は、確定申告書を受理した税務署職員が賄賂を収受したうえで税理士の不正行為に共謀加担したという事実を重視したためと考えられます。
(2)租税法規の解釈の変更と「正当な理由」
判例は、外国法人である親会社から日本法人の子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益の所得区分に関して、税務当局が従来の一時所得とする取扱いを、平成10年ころから給与所得とする取扱いに変更し、平成14年6月の通達の改正により初めて変更後の取扱いを通達に明記した等の事情の下で、納税者が平成11年分の所得税の確定申告で上記権利行使益を一時所得として申告したことについて、過少申告加算税を免除する「正当な理由」があるとしています(最高裁平成18年10月24日判決・民集60巻8号3128頁)。
また、判例は、匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が、当該契約に基づく損失の分配として計上された金額(本件損失)を不動産所得に係る損失として所得税の申告をした事案において、本件申告の後に、匿名組合員が受ける利益の分配の所得区分に係る課税庁の公的見解が通達改正によって変更されているが、変更前の公的見解によれば本件損失は不動産所得に係る損失に該当する等の事情の下では、本件申告について、過少申告加算税を免除する「正当な理由」があるとしています(最高裁平成27年6月12日判決)。
上記の判例は、納税者の申告の後に、通達への明記や改正により税務当局の従前の取扱いや公的見解が変更された場合、納税者の当該申告が税務当局の従前の取扱いや公的見解に依拠した申告であれば、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとして、過少申告加算税を免除する「正当な理由」を認めたものと考えられます。
(3)税務当局の見解の納税者による認識と「正当な理由」
判例は、事業者が消費税等の確定申告で課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除した事案について、税務当局が本件と同様の課税仕入れを共通対応課税仕入れに区分する見解を採っていることが、本件申告当時、税務当局の職員が執筆した公刊物や、公表されている国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例を通じて、一般の納税者も知り得た等の事情の下では、過少申告加算税を免除する「正当な理由」は認められないとしています(最高裁令和5年3月6日判決・判タ1511号104頁、最高裁令和5年3月6日判決・民集77巻3号440頁)。
この判例は、税務当局の見解が一般に知り得る状況にあったことなどから、事業者としては、本件と同様の課税仕入れを共通対応課税仕入れに区分する取扱いがされる可能性を認識すべきであったと評価して、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる事情はないと判断したものと考えられます。
5 まとめ
過少申告加算税は、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図るために課されるものです。
もっとも、過少申告加算税は、修正申告が「更正を予知」したものでない場合には減免され、当初の申告税額が過少となったことについて「正当な理由」がある場合には免除されることになります。
そのため、納税者としては、修正申告をした時の更正に関する認識、過少申告に至った経緯や租税法規の解釈の根拠などを踏まえながら、「更正の予知」や「正当な理由」の有無について慎重に検討することが重要といえます。
関連記事はこちら
重加算税が課される場合とは?重加算税の争点と判例の考え方
税務調査と国税の犯則調査の関係
関連業務はこちら


