取締役報酬の決定方針を透明化 改正会社法が成立
1 取締役の個人別の報酬の決定方針を定めることが必要
2019年12月4日、会社法の一部を改正する法律(以下「改正会社法」といいます。)が成立し、同月11日に公布されました。
焦点となっていた取締役報酬の決定に関する規律の見直しについては、上場会社等において、取締役の個人別の報酬の内容が定款又は株主総会の決議で定められていない場合に、取締役会が取締役の個人別の報酬の内容の決定方針として法務省令で定める事項を決定しなければならないものとされました(改正会社法361条7項)。
取締役会から代表取締役への再一任については事業報告による情報開示へ
取締役会が取締役の個人別の報酬決定を代表取締役に再一任する現在の実務の取扱いに関しては、2019年1月に法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会で決定された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」を踏まえて、改正会社法においても代表取締役への再一任自体に規制は設けられていません。
なお、「要綱案」では、報酬等の株主総会の決議に関する事項や取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項などについて、公開会社に対し事業報告による情報開示を求めています。
今後、法務省令により、取締役の個人別の報酬の決定方針として定める事項の詳細が規定されるとともに(改正会社法361条7項参照)、取締役の報酬に係る株主総会の決議や取締役会から代表取締役への再一任に関する事項などについても、事業報告による情報開示の充実が図られるものとみられます。
2 取締役へのインセンティブ報酬としての株式等の付与の規定を整備
改正会社法は、取締役の報酬に関する規律の見直しとして、取締役の報酬として会社の株式や新株予約権を付与する場合に株主総会の決議事項に株式等の上限等を加えることや(改正会社法361条1項3号、4号など)、上場会社が取締役の報酬として株式の発行等をする場合に出資の履行等を要しないものとすること(改正会社法202条の2、236条3項、4項など)も定めています。
今後、取締役へのインセンティブを付与する手段として有用な株式等の報酬について、手続の透明化により適切かつ円滑に機能することが期待されています。
3 施行日
改正会社法は、公布の日から1年6月以内の政令で定める日からの施行が予定されています(附則1条本文)。
ただし、株主総会資料の電子提供制度の創設及び会社の支店所在地における登記の廃止については、公布の日から3年6月以内の政令で定める日からの施行が予定されています(附則1条但書)。
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